「音楽の知識がなくても、AIを使えば作曲して稼げるらしい…でも、著作権とかって本当に大丈夫なの?」
2025年、SunoやUdioといった音楽生成AIの進化は目覚ましく、誰でもプロ並みの楽曲を作れる時代が到来しました。これを副業に繋げたいと考えるのは、自然な流れです。しかし、その一方で「AIが作った音楽を販売して、後から訴えられたりしないだろうか」という、法的な不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんなあなたの疑問や不安に真正面からお答えします。AI作曲副業の現実的な稼ぎ方から、最も重要で複雑な「著作権」の問題、そして安心して商用利用できるツールの具体的な選び方まで、専門的な情報を分かりやすく徹底解説します。
はじめに:AI作曲は本当に稼げる?最大の壁は「著作権」
結論から言うと、AI作曲を副業として収益化する道は、確かに存在します。しかし、その成功は、従来の音楽的才能よりも、市場を読む力、そして法律や利用規約を正しく理解する知識に大きく依存するのが現実です。
この分野で最も注意すべきなのが「著作権」の問題です。実は、AIサービスがユーザーに約束する「商用利用権」と、法律が定める「著作権」との間には、大きな隔たりが存在します。この「著作権のパラドックス」を理解することが、安全にAI作曲副業を始めるための、何よりも重要な第一歩となります。
【最重要】AI生成音楽の著作権Q&A
AI作曲副業を始める前に、誰もが抱く著作権に関する疑問について、Q&A形式で解説します。ここを理解せずに収益化を目指すのは非常に危険です。AIツールの「利用規約(TOS)」がなぜ絶対的なルールとなるのか、その理由をしっかり把握しましょう。
Q1. AIが作った曲に著作権は発生するの?
現在の法解釈では、「NO」となる可能性が非常に高いです。たとえば、米国著作権局は「十分な人間の創作的関与」がない、AIが自動生成した作品は著作権保護の対象にならない、という見解を繰り返し示しています。著作権は人間の創造性を保護するための法律だからです。
そのため、AIサービスが利用規約で「あなたに著作権を譲渡します」と記載していても、法制度が認めていない権利を法的に譲渡することはできません。この点をまず理解しておく必要があります。
Q2. 「商用利用OK」ってどういう意味?ツールの利用規約が全て
では、有料プランなどでユーザーが手に入れる「商用利用権」とは一体何なのでしょうか。その本質は、法的な「著作権」そのものではなく、「AIサービス提供者との間で交わされる、契約上の許可(ライセンス)」です。
具体的には、あなたがそのAIツールを使って生成した楽曲を、商用目的(販売、配信、動画での利用など)で使っても、AIサービス会社から「それはウチの作った曲だから使用料を払え」と主張されることはない、という法的な安全を保証する契約と解釈するのが最も正確です。つまり、有料プランの価値は「法的に保護された資産の取得」ではなく、「事業を行う上での特定のリスクを排除すること」にあるのです。
【ツール比較】商用利用できるおすすめ音楽生成AI 4選
著作権の基本を理解した上で、実際に副業で使える主要なAI音楽生成ツールを見ていきましょう。ここでは、2025年現在、市場をリードする4つのツールを、機能はもちろん、最も重要な「商用利用の条件」という観点から比較・解説します。
Suno:ボーカル付き楽曲を手軽に生成
Sunoは、簡単なテキスト(プロンプト)からボーカルを含む完成度の高い楽曲を生成できることで、AI音楽の普及を牽引する存在です。音楽の知識がなくても、イメージを言葉にするだけで曲が作れる手軽さが魅力です。
- 商用利用の条件: 無料プランで生成した楽曲の商用利用は許可されていません。月額$10程度のProプラン以上に加入し、その加入期間中に生成した楽曲に限り、商用利用が許可されます。
Udio:Sunoの強力なライバル、無料でも商用利用可能
元Google DeepMindの研究者が設立したSunoの競合で、こちらも高品質なボーカル付き楽曲を生成できます。曲の一部を再生成したり、延長したりする高度な編集機能も特徴です。4000万再生を突破したあの有名な『YAJU&U』もこのツールで作られました。
- 商用利用の条件: 他ツールと比較して非常に寛大で、無料プランで生成した楽曲でも商用利用が可能です。ただし、その場合は「Created with Udio」といったクレジット表記が必須となります。有料プランに加入すると、このクレジット表記が不要になります。
SOUNDRAW:著作権リスクを抑えたいBGM制作者向け
BGMやビート制作に特化したツールで、最大の特徴は、そのAIモデルが著作権で保護された他者の曲を学習データに使わず、自社制作のオリジナル音源のみでトレーニングされている点です。これにより、学習データに起因する著作権侵害のリスクを原理的に排除していると主張しており、法的な安全性を重視するユーザーに最適です。
- 商用利用の条件: すべての有料プラン(月額$19.99〜)で商用利用が可能です。ただし、生成した楽曲をYouTubeのContent IDなどに登録することは明確に禁止されているため、注意が必要です。
AIVA:映画音楽のような本格的な作曲AI
クラシックや映画のサウンドトラックのような、構造化された楽曲の生成に強みを持つプロ向けのツールです。世界で初めて著作権団体から「作曲家」として認められたAIであり、権利の扱いが非常に明確です。
- 商用利用の条件: 月額€49程度のProプランに加入すると、生成した楽曲の完全な著作権がユーザーに譲渡されます。これは他のツールにはない大きな特徴で、サブスクリプションを解約した後も、ユーザーが著作権を保持し続けられます。
| ツール (プラン) | 商用利用 | 著作権の帰属 | クレジット表記 | 解約後の利用 |
|---|---|---|---|---|
| Suno (有料) | 可 | ユーザー (契約上) | 不要 | 加入中に生成した曲のみ可 |
| Udio (無料) | 可 | ユーザー | 必須 | 可 |
| SOUNDRAW (有料) | 可 | ユーザー (改変した場合) | プランによる | 可 |
| AIVA (Proプラン) | 無制限 | ユーザー (完全譲渡) | 不要 | 可 (著作権を保持) |
AI作曲で稼ぐための具体的な方法4選
安全に使えるツールがわかったところで、次にその音楽をどうやってお金に変えるのか、具体的な収益化の方法を見ていきましょう。それぞれにメリットと注意点があります。
① ストックミュージックサイトでBGMとして販売する
動画クリエイターや広告制作者などがBGMを探す「ストックミュージックサイト」で、自分のAI楽曲を販売するモデルです。一度登録すれば、楽曲がダウンロードされるたびに収益が発生する可能性があります。
ただし、プラットフォームの規約には細心の注意が必要**です。たとえば、日本の大手サイト「Audiostock」は、AI作曲サービスで作られた作品の登録を明確に禁止しています。海外のサイトでもAI楽曲の受け入れには消極的で、規約違反と見なされるリスクがあります。
② SpotifyやApple Musicで楽曲を配信する
DistroKidのような音楽配信代行サービス(アグリゲーター)を使えば、年間固定料金でSpotifyやApple Musicなどの主要プラットフォームに自分の楽曲を配信できます。再生回数に応じて、ロイヤリティ(著作権使用料)を得るモデルです。
この方法のリスクは、プラットフォーム側の突然のルール変更や、意図せず既存の曲と似てしまった場合の著作権侵害申し立てなどです。SpotifyはAI音楽を全面的に禁止してはいませんが、不正な再生回数の水増しなどには厳しい措置を取っています。
③ YouTubeチャンネルで広告収入やContent IDを利用する
AIで生成したBGMをまとめたチャンネルを作り、YouTubeのパートナープログラムに参加して広告収入を得る方法です。さらに、自分の楽曲が他人の動画で使われた際に収益を得られる「Content ID」という仕組みもあります。
しかし、未加工のAI楽曲をContent IDに登録するのは極めてハイリスクです。もし、他のユーザーがAIで偶然似た曲を生成した場合、あなたが不当に著作権侵害を申し立ててしまう可能性があるからです。Soundrawのように、規約でContent IDへの登録を明確に禁止しているサービスもあります。
④ 動画クリエイターに直接BGMを提供する
クラウドソーシングサイトやSNSを通じて、特定の動画クリエイターやインディーズゲーム開発者などから「こんな雰囲気のBGMが欲しい」という依頼を受け、オーダーメイドでAI楽曲を制作・提供する方法です。単価は高くなる可能性がありますが、安定した収入を得るには営業力や交渉力が必要になります。
【初心者向け】AI作曲副業を始めるための4ステップ
理論がわかったら、次はいよいよ実践です。音楽未経験者がAI作曲副業を始めるための、具体的な4つのステップをご紹介します。
- 市場調査とニッチの特定: やみくもに曲を作るのではなく、まず市場で何が求められているかを調べます。ストックミュージックサイトの人気ランキングなどを参考に、「企業VP向け」「Vlog用チル系」といった売れ筋のキーワードを特定します。
- 高品質な楽曲の生成: 調査したキーワードを基に、SunoやUdioなどのツールで楽曲を生成します。このとき、「ジャンル」「雰囲気」「使用楽器」などを細かく指定する「プロンプトエンジニアリング」の技術が品質を左右します。
- 品質チェックと人間的要素の付加: 生成された楽曲にノイズがないか、曲の展開が自然かなどをチェックします。可能であれば、自分で簡単なボーカルや楽器を重ねるなど、人間による創作的要素を加えることで、作品の独自性と価値が格段に高まります。
- プラットフォームへのアップロード: 選択した収益化プラットフォーム(例: DistroKid)の規定に合わせてファイル形式を整え、市場調査で特定したキーワードを正確にタグ付けしてアップロードします。このメタデータ最適化が、あなたの曲が見つけてもらえるかを決める重要な要素です。
まとめ:利用規約を正しく理解し、AI作曲副業を始めよう
AI作曲副業は、音楽の知識がない人にもクリエイティブな収益化の道を開く、大きな可能性を秘めています。しかし、その道は「著作権」という複雑なルールの上に成り立っています。
成功するための最も重要なポイントは、利用するAIツールの利用規約を徹底的に読み込み、何が許可され、何が禁止されているかを正確に理解することです。特に商用利用に関しては、必ず有料プランに加入し、各ツールの定めるルールを遵守してください。
最後に、あなたの目的に応じた推奨ツールをまとめます。
- 法的な安全性を最優先にBGMを作りたいなら: 自社音源のみで学習したSOUNDRAWが最適です。
- 楽曲の完全な「所有権」が欲しいなら: 著作権が譲渡されるAIVAのProプランが最も強力です。
- 手軽にボーカル付きの曲を作りたいなら: 規約を理解した上でSunoやUdioを活用しましょう。
AI関連の法律はまだ未整備の状況です。常に最新情報に注意を払い、賢く、そして安全に、あなただけの音楽を世界に届けてみてください。


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